骨粗鬆症と歯科治療:気をつけるべきポイントとは?

2024.12.14

鹿児島市谷山中央5丁目にある谷山ファミリー歯科クリニックの永田です。
今回は骨粗鬆症と歯科治療~気をつけるべきポイントとは?~というタイトルで記事を書いてみます。

はじめに

骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
日本には約1000万人以上の患者さんがいるといわれており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあると言われています。
骨粗鬆症の薬を服用している患者さまは、歯科治療の際に気を付けるように言われます。
骨粗鬆症と歯科治療にはどのような関係があるのでしょうか?また、骨粗鬆症の薬を服用している場合、歯科治療で注意すべき点についても
詳しく解説します。


骨粗鬆症の薬とその作用

骨粗鬆症の治療には、主に以下の2種類の薬が使われます:

  1. ビスホスホネート(BP)製剤
    骨の分解を担う「破骨細胞」の働きを抑えることで、骨密度の減少を防ぎます。
  2. デノスマブ
    骨代謝に関与する「破骨細胞」の生成や働きを抑制する抗体医薬品です。

これらの薬は骨を強化するために効果的ですが、副作用として”顎骨壊死(がっこつえし)”という症状が生じる可能性があります。これが、歯科治療の際に注意が必要とされる理由です。


顎骨壊死とは?

顎骨壊死とは、顎の骨が壊死してしまう状態です。特に、抜歯やインプラント治療といった歯科の外科処置後に起こりやすいとされています。症状としては、以下が挙げられます:

  • 歯ぐきの腫れや痛み
  • 口内の違和感
  • 顎の骨が露出してしまう
  • 難治性の感染症

ただし、顎骨壊死の発症リスクは決して高くなく、服薬中の患者さんでも多くの方は問題なく歯科治療を受けることができます。


骨粗鬆症と歯科治療の関係

骨は全身にありますが、歯を支える顎の骨もその一部です。骨粗鬆症が進むと、顎の骨密度も低下し、歯のぐらつきや歯周病の進行が早まることがあります。

また、骨粗鬆症の治療薬が顎骨壊死のリスクを高める可能性があるため、歯科治療を受ける際には特別な配慮が求められることがあります。

歯科治療で気をつけるポイント

骨粗鬆症の薬を服用している場合、歯科治療では以下の点に注意しましょう。

服薬の情報を歯科医に伝える

最初に、服用している骨粗鬆症の薬(ビスホスホネートやデノスマブ)を歯科医に伝えましょう。処方されている薬の種類や服薬期間、投与方法(内服薬または注射薬)などが治療計画に影響します。

歯の定期検診を受ける

歯科治療を必要とする状態になる前に、定期的な歯科検診を受け、むし歯や歯周病を早期に治療することが重要です。外科的処置を避けるためには、普段からの予防が効果的です。

抜歯やインプラント治療には慎重な判断を

骨粗鬆症の薬を服用している場合、抜歯やインプラント治療を行う際に慎重な対応が求められます。場合によっては、治療の前後で服薬を一時中断する「休薬(薬の休止)」が検討されます。ただし、休薬の判断は主治医(内科や整形外科医)の指示のもと行われます。

抗菌薬の使用

外科的処置を受ける場合、感染を防ぐために抗菌薬を使用することがあります。処方に従い、適切に服用してください。

口腔衛生の徹底

口腔内を清潔に保つことも顎骨壊死のリスクを低下させます。以下のポイントに注意しましょう:

  • 毎日の歯磨きを丁寧に行う
  • フロスや歯間ブラシを使って歯垢を取り除く
  • 定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアを受ける

骨粗鬆症患者さまに覚えてもらいたいこと

骨粗鬆症の治療薬は、骨を強くするための重要な薬です。しかし、これらの薬には稀な副作用があり、歯科治療に影響を与える可能性があります。以下の点を心に留めておきましょう。

  1. 薬を続ける意義を理解する 顎骨壊死のリスクは確かにありますが、骨粗鬆症の治療を中断することにより、骨折のリスクが高まる恐れがあります。薬を継続することのメリットとデメリットを主治医とよく話し合いましょう。
  2. 歯科医と主治医の連携が大切 歯科治療を受ける際には、歯科医と主治医が連携して治療を進めることが重要です。必要に応じて、両者が情報を共有できるように手配しましょう。
  3. 自分の体調変化に注意する 治療後に顎や口内に異変を感じたら、すぐに歯科医または主治医に相談してください。

まとめ

骨粗鬆症の薬を服用していても、多くの方は安全に歯科治療を受けることができます。ただし、薬の影響を正しく理解し、歯科医と主治医にしっかり情報を伝えることが大切です。また、日頃からの口腔ケアと定期検診を通じて、健康な口腔環境を保つことが、歯科治療時のリスクを最小限に抑えるポイントです。

あなたの歯や骨の健康を守るために、医療者と協力しながら適切なケアを行いましょう!

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