高濃度フッ化物歯面塗布のすすめ
2022.11.28
カテゴリー: 院長日記
「歯磨きしても、むし歯ができた」と相談を受けることがありますが、残念なことに歯磨きだけではむし歯予防は不十分なのです。むし歯は、ミュータンス菌を主とするむし歯の原因菌が砂糖を餌に作りだす酸によって、歯の表面が溶かされ穴が開いてしまう病気で、むし歯の原因としては、歯質(歯の強さ)・細菌(むし歯菌の数)・糖分(むし歯菌の餌となる砂糖の摂取量・摂取法)があげられますが、今回は歯質を強くするフッ化物について考えてみたいと思います。
「むし歯予防のためのフッ素」って聞いたことがあると思いますが、実はフッ素は身近なものなのです。フッ素は自然界に広く存在する元素の1つで、土や海、大気中と広く分布し、魚介類や肉類、野菜、果物、緑茶にも含まれ、私たちはこれらの食品から毎日、フッ化物を摂取しています。
歯科の分野では、1945年にアメリカのミシガン州で水道水にフッ化物濃度が1ppmになるようにフッ化物を添加するフロリデーションを開始したところ、小児のむし歯が半減したとの報告があり、その後、多くの研究結果からフッ化物が有益なむし歯予防法の1つとして知られるようになりました。現在、ほとんどの歯磨剤にフッ化物(フッ化ナトリウム、またはモノフルオロリン酸ナトリウム)が配合されています。
フッ化物のむし歯予防のメカニズムは下記のように3つあります。
①フッ化物が歯の表面のエナメル質に直接作用して、ハイドロキシアパタイトを耐酸性に優れた(酸に溶けにくい)フルオロアパタイトに変換します。
②フッ化物が、初期むし歯のエナメル質表面で再石灰化を促進し、エナメル質表面から溶け出したカルシウムやリン酸を元に戻そうとします。
③フッ化物がむし歯原因菌の作る酸を抑えて、むし歯の発生を抑制します。
歯科医院で行う高濃度フッ化物歯面塗布と、毎日のフッ化物配合の歯磨剤の使用による歯磨きによるフッ化物の違いはあるのでしょうか? それが、あるのです!
まず、フッ化物の濃度が違います。歯科医院で行う高濃度フッ化物歯面塗布に使用するフッ化物の濃度は9000ppmです。歯磨剤に配合されているフッ化物の濃度は100~1450ppmとかなり違います。高濃度フッ化物歯面塗布に使うものは医薬品、歯磨剤は医薬部外品に分類されています。
高濃度フッ化物歯面塗布の場合、9000ppmの医薬品が使用されるため、3∼4ヵ月ごとの歯科医院での塗布になります。歯面に塗布することにより、高濃度フッ化物が歯質にあるミネラル成分と反応してフッ化カルシウムを生成します。フッ化カルシウムは口腔内が酸性になると少しずつ溶解しフッ化物として作用します。
これに対し、歯磨剤に含まれ毎日する低濃度フッ化物は、フッ化物がそのまま口腔内の粘膜や歯垢に吸着し、エナメル質に直接作用します。
歯科医院での高濃度フッ化物歯面塗布を受け、毎日の歯磨きにフッ化物配合の歯磨剤を使用してもフッ化物過剰摂取の心配は全くなく、両者を併用することで相乗効果が期待できます
高濃度フッ化物歯面塗布によるむし歯予防の効果は、歯の萌出直後に行うのがもっとも効果的であるといわれています。それは、萌出して間もない歯はフッ化物イオンへの反応性が高く、歯表面へのフッ化物の取り込み量が大きいからと言われています。また、むし歯にもっとも罹患しやすい時期は、歯の萌出後2~3年の間とされており、その前に継続した高濃度フッ化物歯面塗布を実施するとむし歯予防に効果的です。
鹿児島市では、1歳児歯科健康診断・2歳児フッ素塗布・2歳6か月フッ素塗布・就学前フッ素塗布・小学一年生フッ素塗布で高濃度フッ化物歯面塗布を行っております。
高濃度フッ化物歯面塗布を行いますが、1歳児歯科健康診断では、これからのお口の中のケアについてのアドバイス、おすすめの歯磨剤の紹介、2歳児フッ素塗布・2歳6か月フッ素塗布では、
これからむし歯になりやすい第一乳臼歯、第二乳臼歯のブラッシング法とフロス指導、歯磨剤の選び方、就学前フッ素塗布・小学一年生フッ素塗布では、第一大臼歯のブラッシング法とフロス指導、歯磨剤の選び方、歯並びの確認をしています。
このような公的制度を利用して、むし歯予防に役立ててみてください。
※「フッ素」は元素名であり、水や食品中の無機のフッ素を「フッ化物(fluoride)」と使い分けをしています。