歯はいつ磨く?
2018.09.14
カテゴリー: 院長日記
谷山ファミリー歯科クリニックの歯科医師の永田です。
日々、診療で患者様と接していると様々な相談をうけます。
今回は、よくある相談「歯はいつ磨く?(食後すぐ?食後時間がたってから?)」について
考えてみます。
これまで、「食べたらすぐに歯みがきを!」と言われてきたと思います。
それは、むし歯の原因となる細菌が多く含まれるプラーク(歯垢)と食後、お口の中に残る
糖質をいち早く取り除くためです。ところが、数年前に食後すぐに歯をみがくと、食べ物に
含まれる酸で歯が軟らかくなっており、歯が削れたり傷ついたりするという報道があって、
混乱しているようです。
この話の基になっているのは、実験的に酸性炭酸飲料に歯の象牙質の試験片を90秒浸した後、
口の中に戻し、その後歯みがき開始時間の違いによる酸の浸透を調べた論文で、むし歯とは
異なる「酸蝕症(さんしょくしょう)」の実験による見解です。
これに対し、日本小児歯科学会の見解では、実際の口の中で歯の表面は、先程の実験で用いられた
象牙質ではなく、酸への抵抗性のより高いエナメル質で覆われており、酸性炭酸飲料を飲んでも
エナメル質への酸の浸透は象牙質よりずっと少ないうえ、唾液が潤っている歯の表面は酸を中和
する働きがあり、すぐには歯が溶けない防御機能があるということです。
つまり、一般的な食事ではこのような酸蝕症は起こりにくいと考えられます。
歯みがきの目的は歯垢の除去、すなわち酸を作る細菌とその原料となる糖質を取り除くことです。
歯みがきをしないと歯垢中の細菌で糖質が分解され酸ができて、歯が溶け出す脱灰が始まります。
このように、歯垢中の細菌が歯を脱灰してできるむし歯と、酸性の飲食物が歯を溶かす酸蝕症とは
成り立ちが異なります。ですので、食事のあとは早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り
除き、脱灰を防ぐことが重要です。食後はなるべく早く歯みがきをすることをお勧めします。